中国における主な宗教を挙げると、四つあります。
まず、仏教が挙げられます。仏教は文化大革命中、旧思想の象徴として、批判と攻撃の対象となりました。多くの仏教寺院が破壊され、そのまま荒れるに任されていましたが、社会が安定するに従って信者が戻り、寺院も修復され始めています。中国の仏教寺院は修行によって自らが救われるとする小乗仏教です。
そして、キリスト教もあります。キリスト教人口は都市部を中心に少なくありません。戦前に欧米のキリスト教国が中国に進出していたことも影響しているでしょう。クリスマスも盛んに行われますが、商業主義に踊らされた面もあるのは日本と同じです。
また、イスラム教もあります。西北地区から華北一帯にかけて教徒が多く、その人口は数千万にも達します。イスラム教徒は、豚肉を食べず朝夕の礼拝を欠かせない、など、厳しい戒律をよく守ります。「清真」という文字を揚げたレストランは豚肉を一切使用しないレストランで、北京でも珍しくありません。そして、北京にはイスラム寺院もあります。
そして、最も古くから存在する道教があります。これは、ある意味では中国で最も広く信仰されている宗教です。一種の土俗宗教で、教義なども曖昧なため、かえって一般民衆に受け入れやすかったと言われています。
しかし、このような多様な宗教の混在する中国では最も多いのは無神論者です。これは、共産主義思想が宗教を否定したからで、特に新中国成立後に学校教育を受けた世代に多いです。
無神論者は、科学理論だけを自己の行動の根拠とする人々です。こういう人たちが日本に来て驚くのは、そこかしこにある神社やお寺です。また、日本人の家に行ったことがある中国人は、床の間の横に鎮座する仏壇に驚き、そこに毎日お線香をあげるのを見て、ますます驚きます。日本は高度に科学文明の発達した国なのに、仏壇に手を合わせるのは何故なのかを不思議に思う人が多いでしょう。